アメリカでは、トランス脂肪酸の食品使用が、2018年6月までに全廃になることが発表されました。「身体によくない」というイメージがあるトランス脂肪酸。なぜ体に悪いのか、どういった食品に含まれているかなど、説明していきましょう。
01 トランス脂肪酸ってなに?
トランス脂肪酸は脂肪酸の一種です。
大きく分けて
・天然に食品に含まれているもの
・油脂を加工・精製する工程でできるもの
の2種に分類されます。
天然のトランス脂肪酸は、牛や羊などの反芻動物の体内に存在しますが、ごく微量なので、健康への影響を気にする必要はありません。
問題なのは、
植物性の油脂を加工する過程で発生するトランス脂肪酸です。何が問題なのかを説明するには、まず脂肪酸の性質から説明していきましょう。
前回のコラムでもご紹介しましたが、「脂肪酸」は、
「飽和脂肪酸」と
「不飽和脂肪酸」に大きく分類されます。
・「飽和脂肪酸」は、バターやラードなどの動物性の脂質で、常温で固まるのが特徴。
・「不飽和脂肪酸」は、魚類や植物油の脂質で、常温では液体。
トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸である
植物性の油を加工・精製する際に生成されます。精製される原因としては、次の2つが挙げられます。
・液体の植物油に
水素を添加し、化学反応で固形にしたとき
・植物から油を搾る精製の工程で、
発生する臭いを取り除くため高温処理したとき
この人工的に作られたトランス脂肪酸が危険視されているのです。
では次に、トランス脂肪酸を多量に含む食品としての代表的例を挙げてみましょう。
02 トランス脂肪酸を多量に含む食品
・マーガリン
・ショートニング
・サラダ油、業務用揚げ油
・マヨネーズ
これらを使用して作った食品にも含まれます。
・ドーナツやクッキー、ケーキ
・パン
・フライドポテトやポテトチップス
・揚げ物(お惣菜)
健康に悪いトランス脂肪酸がなぜこんな身近な食品にふくまれているのでしょうか。
そもそも20世紀初頭は、動物性油脂より植物性油脂の方が健康的と思われていました。ですが植物性の油脂は、酸化しやすく日持ちしません。そこで「水素添加」の化学処理を行うことで、酸化しにくく腐らない、しかも安価に作れるマーガリンやショートニングが登場しました。
トランス脂肪酸を作りたくて作ったのではなく、
食品の保全性や、コストダウンを求めていたらトランス脂肪酸が含まれていたのです。
03 体への影響は?
具体的にどういった悪い影響があるのでしょうか?
まず、動脈硬化、心疾患、心筋梗塞、脳梗塞などの血液が詰まることによって起こる病気のリスクが高まります。
トランス脂肪酸は、血中のLDLと呼ばれる「悪玉コレステロール」を増やしHDLという「善玉コレステロール」を減らすというやっかいな特性があります。過剰に摂取すると、肝臓で処理されずに体内にばらまかれ、血管の壁に蓄積、血管が詰まってしまうのです。
さらには、肥満、アレルギー性疾患(喘息、アレルギー性鼻炎)、妊産婦・胎児への影響(胎児の体重減少、流産)など、健康への悪影響が報告されています。
とはいえ現在の日本では、まったくトランス脂肪酸を摂取しないことは難しいのが現実。
トランス脂肪酸は、体の中では他の脂肪酸と同じように吸収、代謝されるので、特別に蓄積しやすいということはありません。あくまでも「過剰に摂取する」と、悪影響が及ぶリスクが高まります。
WHOの目標である総エネルギー摂取の1%未満。
日本人のトランス脂肪酸の平均摂取量は、男性で0.30%、女性で0.33%です。
日本では、通常の食生活では健康への影響は小さいと言われ、脂質に偏った食事をしている人は、留意する必要があります。
脂質の種類を理解して、栄養バランスのよい食生活を送ることが大切です。