——仙台から“本物のイタリア”を届ける若きバリスタの挑戦
「ほのかちゃん、今日のおすすめは?」
席につくなり、メニューを開く前にそう声をかける常連のお客様がいらっしゃいます。
その視線の先にいるのは、仙台の人気レストランPizzeria e Osteria PADRINO(以下、パドリーノ)の看板スタッフ、齋藤 穂乃香さん。
ホールを軽やかに巡りながらワインを注ぎ、一杯のエスプレッソを丁寧に淹れる姿は、まっすぐで凛とした美しさを感じさせます。
「また来たい」と思うのは、パドリーノの料理がとびきりおいしいからだけではありません。
あの笑顔に、また会いたくなるからです。
■お店での役割を教えてください。
接客とドリンク全般を担当しています。
バリスタとしてエスプレッソやカプチーノを淹れるのはもちろん、ワインや季節ごとのドリンクメニューの開発、スタッフへの共有まで幅広く任せてもらっています。
■飲食の道に進むまで、どんな学生時代でしたか?
中学高校はずっとバスケ部でキャプテンを務めていました。
小さい頃から人と関わったり、チームで目的を追ったりすることが好きで。
高校時代は居酒屋でアルバイトをして「友だちと話すのとは違う、大人との会話」にもおもしろさを感じました。
そこから接客が好きになっていきました。
■高校卒業後に就職したのは、仙台を代表する迎賓館の日本料理部門だそうですね。
はい。
今とはまったく違うおしとやかな空間で、着物の着付けを覚えながら接客の基礎を学びました。
でも、慣れてきた頃に突然イタリアン部門へ異動になって……
正直、最初は辞めたいと思いました。
ハイレベルな技術とスピード、熱量が求められる現場で、毎日ついていくのが必死で。
師匠に怒られて、泣きながら帰ったこともあります。
でも、必死で踏んばって続けていたら、いつの間にかその場所が大好きになっていました。
■その後世の中はコロナ禍を迎え、迎賓館は閉館しましたね。
あの時は本当に途方にくれました。
自分の将来が不安だったのもありますが、それ以上に、大好きな店がなくなって、お客さまに会えなくなってしまうのがつらかった。
そんな時、三橋さん(現パドリーノ社長)や佐々木シェフが声をかけてくれたんです。
「あたらしい店をつくるから、一緒に来てくれないか」って。
このチームなら、絶対にすばらしいお店が作れる。
そう思って、「ぜひお願いします!」と即答しました。
今も、迎賓館時代のお客さまたちが、パドリーノに足を運んでくださっています。
本当にしあわせなことですよね。
■パドリーノで働くようになってからどう変わりましたか?
迎賓館時代は出されたものを提供する立場でしたが、今はドリンクの開発をしたり、お出しするワインをすべて試飲して選んだりしています。
自分の言葉でお客さまに伝え、自分の言葉でメニューを書く。
それがたのしいです。
■バリスタとしても活躍されていますよね
はい。
パドリーノでのチーム構成を考えたとき、みんなそれぞれ特技を持っていたので、わたしには何ができるだろう?と考えて、「自分がバリスタになるしかない!」と決意。
お店がオープンするまでの準備期間に猛練習して、バリスタの資格も取得しました。
■コーヒーの魅力はなんですか?
……ちょっと、おしゃれなことを言ってもいいですか?
エスプレッソという言葉には、実はふたつの意味があるんです。
——ひとつは「急速に」。
——もうひとつは「特別な」。
そう、エスプレッソには “あなたのためだけの特別な一杯” という想いが込められているんですよ。
なんだか素敵じゃないですか?
もっと深く学びたくて、これからはハイレベルな資格にも挑戦して、いつか“マスター”と呼ばれるバリスタになりたいと思っています。
■ケトスイートを使うようになったきっかけは?
うちのドルチェを担当しているシェフがケトスイートを取り入れているのですが、はじめて試食した時に「え?これお砂糖じゃないの?」ってびっくりしました。
そこで、ケトスイートで作ったドリンクを常連さんにも試飲してもらいました。
そしたら「おいしい!」って言ってくれて。
イタリアでは、エスプレッソに砂糖をたっぷり入れる文化があるんです。
からだのことを考えると躊躇してしまうけど、ケトスイートなら甘さを変えずに本場の味を再現できる。
それに、コーヒーはフルーティな種類もあるので、くせのないケトスイートはむしろコーヒーの味の邪魔をしないので重宝しています。
■おすすめドリンクはありますか?
最近は暑いので、夏にぴったりなシェケラートというドリンクがおすすめです。
熱いエスプレッソと砂糖、氷をカクテルシェイカーでふって、急冷しながら泡立ててつくるドリンクなのですが、これも甘さがポイント。
普段砂糖をひかえていて、ドルチェやドリンクを頼まないお客さまにも、砂糖ゼロでつくれることをお伝えすると、「それなら飲んでみようかしら」とよろこばれます。
冬も、食後にほっと温まれる甘いドリンクは格別だと思っています。
食後の甘いドリンク、普段ならちょっと躊躇しますが、これなら罪悪感ゼロで自分でも頼んじゃうなと。
■飲食店がケトスイートをつかうことについてどう思いますか?
なんでもネットで購入できる時代だからこそ、こういった商品を実際に飲食店側から発信ができるのは、むしろ新しい価値だと思っています。
だって、その商品を知らない人でも、お店に行ってケトスイートを使ったメニューがあれば、「どんな味なんだろう?」って頼んでみる。
それでおいしかったら、こんな選択肢もあるんだって、からだのことを考えるきっかけになれるじゃないですか。
大切なお客さまには健康でいてほしいですから。
便利な時代になったけど、こういうことができるのは飲食店ならではだと思います。
■今後の夢はありますか?
将来は、仙台から“バール文化”を広めたいと思っています。
バールってご存知ですか?
イタリアのあちこちにある、立ったままコーヒーを飲んで会話を楽しむ、立ち飲み喫茶のようなものです。
でも、ただのコーヒーショップじゃない。
「そこへ行けば、誰かがいる」。
そんな安心できる家のような場所で、イタリア人の生活やコミュニティの中心になっているんですよ。
わたしはこの、あたたかいバール文化が大好きで。
でも、日本ではまだあまり浸透していません。
だからいつか、バールをつくって、コーヒーを通して安心できる場所を届けたい。
そのために、健康を意識したメニューを取り入れることは、より多くの人を笑顔にする一歩だと思います。
おいしいものを楽しめて、健康にもいい。
最高じゃないですか。
彼女が淹れる一杯には、「人を笑顔にしたい」というまっすぐな想いが込められています。
仙台から、小さなカップに大きな気持ちを乗せて届けるために。
若きバリスタの挑戦は、これからも続いていきます。
住所:宮城県仙台市青葉区二日町17番31号プレシャス二日町1F
TEL:022-290-1138
営業時間:Lunch 11:30~14:30/Dinner 17:30~22:00
定休日:毎週火曜日・水曜日
HP:https://pizzeria-padrino.com/
